抗がん剤治療にはどうして副作用があるの?抗がん剤の種類と伴う副作用をまとめて解説

標準治療の場合、がんと診断されるとがんの部位・ステージなどから治療の種類と順番が決まります。その治療法の中の ”抗がん剤” に対し、副作用が辛いイメージを持つ方が多いと思います。
そこで今回は抗がん剤についての基礎知識を解説します。

抗がん剤とは

まず、抗がん剤で倒す ”がん” について、自分自身の細胞が何らかの刺激を受ける事で性質が変化し制御されずに細胞増殖が起こった状態(腫瘍)の中で、周辺の臓器への浸潤や他臓器への転移によって、治療をしないと死の原因になりうるものを ”がん” といいます。

もともと自分自身の細胞ではありますが、約60兆個・200種類の細胞がそれぞれの部位で機能しているヒトの体の、どの部分・どの種類の細胞が変化してできた ”がん” なのかで性質は大きく異なります。
そのため、抗がん剤はそれぞれの細胞(=どの部分でできたか)の特徴を捉えたアプローチでがんを倒します。

抗がん剤はもともと第一次世界大戦で使用された毒ガス(ナイトロジェンマスタード)から始まり、がんの種類に合わせて多種多様な抗がん剤が開発されました。薬の種類は今や150種類を超え、医療の進歩と共に日々新しい抗がん剤の開発が進められています。

抗がん剤の種類

抗がん剤は大きく分けて下記の5種類となっています。

①細胞障害性抗がん薬(従来の抗がん剤)

 ・代謝拮抗薬
 ・白金製剤
 ・抗がん性抗生物質
 ・トポイソメラーゼ阻害薬
 ・微小管阻害薬

②ホルモン剤、ホルモン拮抗薬

③免疫・生体反応薬

④分子標的薬

⑤免疫チェックポイント阻害薬

次からそれぞれの特徴を解説します。

① 細胞障害性抗がん薬(従来の抗がん剤)

がん細胞は、おおまかに言うと無限に増える能力(細胞分裂)を持ってしまった状態です。そこで、化学物質を用いて細胞分裂を止めるのが「細胞障害性抗がん薬」の抗がん剤です。

その中でも「代謝拮抗薬」は、細胞分裂をする時に必要な遺伝子の合成を阻害するタイプで、最も古くから化学療法で使われています。5-FUやカペシタビン、錠剤のS-1などがこのタイプです。

白金製剤」は、細胞内に入って遺伝子とくっつき、細胞の自死(アポトーシス)を誘導します。シスプラチンやオキサリプラチンなどがこのタイプです。

抗がん性抗生物質」は、微生物によって作られた物質で現在も広く使われています。次のトポイソメラーゼ阻害薬と同様にがんの細胞分裂を停止させます。ブレオマイシンなどがこのタイプです。

トポイソメラーゼ阻害薬」は、細胞分裂をする時に細胞内で使う酵素(トポイソメラーゼ)の働きを抑えて、細胞分裂をできなくします。イリノテカンなどがこのタイプです。

微小管阻害薬」は、細胞分裂をする時に細胞内で重要な役割を担っている微小管の邪魔をして、細胞分裂をできなくします。パクリタキセル、ドセタキセルなどがこのタイプです。

このように「細胞障害性抗がん薬」には種類が複数ありますが、いずれも ”細胞分裂をできなくする” というアプローチでがんを攻撃します。しかし残念な事に、がん細胞だけでなく正常な細胞の細胞分裂も邪魔してしまいます。

特に細胞分裂が盛んな部分で細胞分裂の邪魔をすると異変が起こりやすく、食道や胃などが影響を受けると吐き気や食欲不振・毛根細胞が影響を受けると脱毛、などの症状が出てこれらが副作用と呼ばれています。”抗がん剤” と聞いてイメージする副作用はこれらの症状が多いのではないでしょうか。

② ホルモン剤、ホルモン拮抗薬

乳がんや前立腺がん、子宮体がんは、体の中のホルモンの状態が原因で起こってしまう事があります。そこで、これらのがんが欲しがるホルモンの分泌を邪魔することで、がんの成長の勢いを止めることが出来ます。おおまかに男性ホルモン・女性ホルモンがあるため、性別と年齢で適切な薬剤が使われます。

副作用としては更年期障害に似た症状、また男性の場合は筋量・乳房・皮下脂肪量の変化が出る事があります。

③ 免疫・生体反応薬

体内で異物を排除してくれる免疫細胞は、体の状態の様々な変化をきっかけにして異物への攻撃を開始し、その変化を化学物質を使って引き起こします。
免疫細胞が集まり攻撃するきっかけとなるインターフェロンや、免疫細胞の攻撃能力を強化するピシバニールなどがこのタイプです。

④ 分子標的薬

多くの抗がん剤が、物質からがんに効くものを研究して開発されているのに対し、分子標的薬は、がん細胞特有の増殖や転移などの現象をターゲットに開発された薬です。

がん細胞が細胞分裂をする際のシグナルの伝達を止めるものと、がん細胞が栄養を得るために血管を作るのを阻害するものの、大きく2つに分かれています。

元々がん細胞のみターゲットにするように開発されているため、従来の抗がん剤と比べて副作用が少ないのが特徴ですが、手足の皮膚反応や皮疹、間質性肺炎など、従来の抗がん剤ではあまり見られなかった副作用があります。

⑤ 免疫チェックポイント阻害薬

③の免疫・生体反応薬は “免疫細胞の攻撃力を上げる” 方法でしたが、免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が “免疫細胞から攻撃されないようしている状態を解除する”方法でがんに対抗します。

免疫の機能はとても複雑ですが、簡単に説明すると、免疫細胞が暴走して自身の体を攻撃しないように、正しい手順と手続きを経て異物を攻撃するようになっています。がん細胞はこれらの手順と手続きを悪用し、免疫細胞のターゲットにならないような状態を作っています。「免疫チェックポイント阻害薬」はこの悪用された状態を強制解除して、免疫細胞ががん細胞を攻撃するようにします。

この「免疫チェックポイント阻害薬」は新しく画期的な手法で、がん種の適応拡大や新たな承認が進むなど、がん薬物療法はこれから大きく変わっていくものと期待されています。

ただ、この薬は免疫が攻撃する際の手順や手続きを強制解除するため、免疫が暴走しやすくなる恐れがあります。免疫の仕組みは日々研究が進んでいますが、全てが明らかになっている訳ではないため、内分泌内科や循環器内科などと連携し、注意して副作用のチェックを行いながら投薬する事が多いです。

標準治療に対する自由診療の立ち位置

これまで標準治療の中の抗がん剤について解説してきましたが、それに対して自由診療で行う免疫療法は、薬を使うのではなく患者自身の免疫細胞を採取・攻撃機能を高めて数を増やしお体に戻す方法ですので、化学物質で体の機能を変化させる訳ではなく、副作用が非常に少ない治療法です。
標準治療、自由診療で出来ることや副作用に違いがあり、適切に選択することが必要です。

最後に

如何でしょうか、種類が多く分かりづらいと思います。安心して頂きたいのは、標準治療では、がんの部位やステージによって使う薬の種類や順番が決まっています。ご不安になった際は、主治医の先生に使用する抗がん剤について詳しく話を聞いてみてください。
標準治療は症例が多く、副作用の情報なども解明されている部分が多いので、丁寧に説明してくださると思います。

大切なのは納得して治療する事ですので、気後れせずがん医療のプロに確認しましょう。

参考文献:がんがみえる第1版・メディックメディア、YORi-SOU がんナーシング別冊 これだけは押さえておきたい がん化学療法の薬-抗がん剤・ホルモン剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬・支持療法薬-はや調べノート2023・2024年版第5版・株式会社メディカ出版

まとめ

がん治療の副作用について

抗がん剤は体のどの部分・どの種類にできたがんかによってアプローチが変わるため、種類がいくつかある

抗がん剤の種類を大きく分けると5種類となり、それぞれ副作用がある場合が多い

抗がん剤を使用する標準治療に対して、自由診療である免疫療法は副作用が少ない傾向

分からないことがあり不安な場合は迷わず主治医の先生に相談する

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